3歳のYくん。

一人っ子で、普段は穏やかで、優しい男の子です。

ある日のレッスンでのこと。

オレンジ色の、コンクリートミキサー車や、ショベルカー、などを使い規則性の勉強をしていました。

男の子も、女の子も、車に触って遊びたくて仕方がなくなってしまいました。

レッスンでは、先生がデモンストレーションを行い、生徒が答えるというスタイルをとっています。

ですので触らせてレッスンを遅れさせるわけにはいきません。

とっさに「じゃあ、お約束ね!最後までしっかりレッスン頑張れたお友達には、この車を、先生、貸してあげます。お約束したよ。みんな頑張れる?」と言いいました。

するとみんな、「はーい!頑張れます。」と、言ってくれました。

レッスンは進み、最後のお取り組み、お雛様、お内裏様を作ることになり、みんな頑張って製作に取り組んでいました。

ところが、前日も、振替で、同じお雛様作りをしていたYくんは、お母様が、

「ちょっとだけ違うよ、こうじゃない?」と、アドバイスをしたつもりで、手を出しました。

その瞬間、「いやや!」と、お母様の手を振り払い

「もう、ママ嫌いや!もうせえへん!」と言って、クレヨンや、糊などのお道具をぐちゃぐちゃにして放り出してしまいました。

お母様は、とても困ってしまい。

「ごめんなぁ」と、困り顔で、散らかっているお道具を片付けようとすると、

「やめて!」と、お母様に、手を上げる始末。

どうしてあげたら、Yくんの為になるのか、考えました。

「Yくん? Yくんが、ママ嫌いでも、先生が、嫌いでも、ママも、先生も、Yくんが大好きよ。もう少しで、出来上がるよ。イヤなら、やらないでいい。でも、ママを叩くのは、やめましょう。」と、叩いている手を握りました。

すると、他のお友達が、一人、また一人と、お雛様を仕上げはじめました。

「はい!良く出来たね!素敵!頑張りました!えらいよ!」と、出来上がった子から、車を手渡しました。

「お約束守ってくれた子には先生もお約束守ります!」

そして、Yくん以外の全員が車を手にして、レッスン終了のご挨拶をしました。

すると、Yくんは、周りの子が楽しく車で遊び始めたのを見て、

「やっぱり、やる」と、最後までお雛様を仕上げました!

「Yくん!えらい!お約束守れる子、先生大好きよ!はい、どうぞ!」と、車を渡しました。

お母様も、「もうママは、手を出さないから、やってごらん」と、促してくださいました。

母親講座の間お友達と、楽しく車でで遊ぶYくんは、いつもの、穏やかで優しいYくんに戻っていました。

暗唱が終わり、お教室を出て行く子どもたち。

Yくんは、一番最初にお教室を出て行きました。

私は、もっときちんとYくんと向き合って褒めてあげたかったので、全員の暗唱を

聞いた後、走って追いかけていきました。

お母様と、手を繋いで帰って行くYくんの後ろ姿に安心しながら、追いついて、

「Yくん、今日は、先生、レッスンの途中で、Yくんのこと、大丈夫かなぁって心配したよ。でも、やっぱり、Yくんは、先生が、大好きな優しい、頑張れるYくんでいてくれたね。ありがとう!大好きよ!」と、Yくんを抱きしめました。

Yくんは、頷き、ニコニコとした笑顔を見せてくれました。

お母様は、「Yは、先生のことが大好きなんです。よかったなぁ!」と、Yくんの頭を撫でてくれました。

「また、来週も、待ってるよ!」と、頭を撫でて別れました。

まだまだ3歳の男の子、お母様への甘えもあったと思います。

でも、自分の力で最後までやり抜く力を付けたYくんは、一つ成長したのではないでしょうか?

これからも、Yくんの成長を見守って行きたいです。

津田沼教室 笠原先生